契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 伊織さんが隣に座って、ぴたりと寄り添ってくる。
 土曜日の午後。
 午前中、伊織さんと一緒に産婦人科へ行って、定期検査を受けてきた。
 今日、赤ちゃんの性別を教えてもらった。
 おなかの中の子は、女の子だった。
 それを聞いた伊織さんはとろけそうな顔で微笑んだ。今から親ばかになる姿が思い浮かぶ。

「結菜」
「なぁに?」

 名前を呼ばれて伊織さんのほうを向いたら、真摯な瞳にじっと見つめられていた。そのまっすぐな視線から目をそらせない。

「そろそろ正式に入籍しようか」
「入籍……」

 思わず胸がときめいた。
 とうとう伊織さんと本当の夫婦になるんだ。
 でも、彼の言葉の続きを聞いて、急に気持ちがしぼんだ。

「婚姻届を用意している。あとでサインをしてほしい」

 少し素っ気ない声音に、そのサインが契約結婚の署名であることを思い出したのだ。
 切なさが胸を覆う。
 勘違いしてしまいそうだけど、どんなに大事にしてもらっても、愛されて結婚するわけではない。
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