契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 でも、こんなに優しくされたら、どんどん好きになってしまう。好きになればなるほど苦しさが増すのに。
 そんな心を隠して返事を返す。

「そうね。おなかもそろそろ隠し切れなくなってきそうだし、会社にも届け出ないと」
「きみのご両親へのあいさつはどうする?」
「あとで電話するから、代わってもらえる? 実家に行くのは、まだ先でいいかな。旅行するのは少し不安だし」

 家族にも会いたいけれど、この状況をうまく説明できる気がしなくてためらってしまう。

「伊織さんのほうはどうなの? ごあいさつが必要な方は?」
「親族は多少いるが、俺のほうで話を通しておく。彼らの望みどおり、結婚して後継ぎもできるんだ。余計なことは言わせない」

 伊織さんの口調では、親戚とはあまり親しくはないようだ。
 そういえばプロポーズされたとき、まわりから結婚しろとうるさく言われていると聞いた。縁談も多そうなのに、わたしなんかで大丈夫なのかしら。
 沈んだ様子が見て取れたのか、伊織さんの腕が安心させるようにわたしの肩を抱きしめた。
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