契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
「なにも心配はいらない。俺の人生は俺が決める。俺は、きみと家族になると決めたんだ」

 その晩、実家に電話をした。
 両親はとても喜んでくれて、特に母はすぐこちらに来たがった。だけど、しばらく待ってほしいと伝えた。
 母はなにも聞かなかったけれど、事情があることは感じたかもしれない。

『結菜、すごい人と結婚することになったのね。でも、相手がだれであろうと、お母さんは結菜が幸せになってくれればそれでいいから』

 母の言葉に涙があふれそうになって、慌てて伊織さんに代わってもらった。

「はじめまして。お嬢さんとお付き合いさせていただいております東條伊織と申します。後日改めてごあいさつにうかがいたいと思っておりますが――」

 伊織さんが両親と話しているのを聞きながら、指先で涙をぬぐった。

 お母さん、わたし、好きな人と結婚します。その人は優しくて、わたしと赤ちゃんをすごく大切にしてくれるけど……。
 彼は、わたしを愛してはいないの。

 次から次へと涙がこぼれて止まらない。スマートフォンで話しながら、伊織さんが心配そうにのぞき込んできた。
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