契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
4.きみがいないと息ができない
婚姻届の証人は、わたしの両親にしてもらうことになった。
郵送で戻ってきた書類を、伊織さんの秘書が代理で区役所に提出する。わかってはいたけど、ロマンチックでもなんでもない、単なる事務手続きだ。
ただその夜、伊織さんがいつもより豪華な夕食を作ってくれて、寝る前におでこと頬と、指輪のはまった指先にキスをしてくれた。
そして、『入籍したら寝室を一緒にする』とう最初の約束どおり、わたしたちは夫婦用の寝室で休むようになった。
「結菜、これからよろしくな」
「はい」
わたしはとうとう『東條結菜』になってしまった。ほんのりうれしくて、ちょっぴり切ない。
同じベッドで横になる。伊織さんが寝返りを打つと、その気配を生々しく感じる。
緊張したけれど、伊織さんは結局なにもせず、すぐに寝てしまった。
伊織さんと体を重ねたのは、あの『グラントレノ あきつ島』の夜だけだ。ほっとしたけれど、好きな人に相手にされないさみしさもあって、複雑な気分だった。