契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 伊織さんの手に包まれた指を曲げて、ぎゅっと彼の指先を握りしめる。彼の瞳が優しくとけて、甘い色を帯びる。

「わたしも、あなたが好きです」

 ちゃんと伝えようと思ったのに、声が震えてしまった。はっきりと聞こえただろうか。

「……結菜?」
「わたし、ずっと隠してきたけど、あなたを愛しています」

 伊織さんが目を見開いた。

「嘘だろ? 信じられない」
「わたしと同じこと言ってる」

 思わず、くすっと笑ってしまった。伊織さんも少し表情をゆるめた。

「伊織さん、もうちょっとこっちに来て」
「ん?」

 顔を近づけてくる伊織さん。
 わたしは少し身を乗り出して、その唇に口づけた。

「結菜!?」
「この子が生まれて、わたしの体調も戻ったら……」
「……ああ」
「本当の奥さんにしてもらえますか?」

 ただの男と女としてもう一度恋をはぐくんで、ぬくもりを分け合って、今度こそ伊織さんと夫婦になりたい。心と心のつながった、ごく当たり前の夫婦に。契約じゃない夫婦に。
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