契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
パパは妻子を溺愛しすぎる
1.ハッピーバースデートゥユー
「結菜、愛菜、そろそろ到着するぞ」
運転席に座った伊織さんが、バックミラー越しに後部座席を見て微笑んだ。
通勤には運転手つきの社長車を利用しているけれど、プライベートでは伊織さんが自分で運転する。
以前はスポーツタイプの車に乗っていた。今の車は、家族で使うことを前提に買い換えた国産のSUV。個室が広いし、荷物もたくさん載せられるので、長距離のドライブも快適だ。
伊織さんの運転もすごくうまくて安心していられる。
料理もそうだけど、なにをやってもプロ並みにこなしてしまうので感激してしまう。素直にその感動を伝えると、彼はいつも照れくさそうに笑う。
「結菜はかわいいなぁ」
そして、なぜかキスされるまでがお決まりの流れだ。今は運転中なので、微笑むだけだけど。
SUVの後部座席には、わたしと新生児用のチャイルドシート。この小さなチャイルドシートもそろそろ買い換えなければいけない。
「愛菜は大人しく寝ているな」
「ええ、さっきおっぱいを飲んだら眠くなっちゃったみたい」
すやすやとかわいらしい寝息を立てている赤ちゃん。愛菜――それが、伊織さんとわたしの愛娘の名前だ。