【書籍化決定】契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 名前をつけたのは伊織さん。
 妊娠中に、だれよりも大切な結菜の名前から一文字入れたいと真剣に提案された。愛妻家丸出しな名づけで恥ずかしかったけれど、今はわたしの名前も娘の名前も愛情いっぱいに呼んでもらえてうれしい。
 無事出産の日を迎えたのは、去年の夏の盛りだった。
 切迫流産で大変だったとは思えないほどスムーズな安産で、会社から急いで伊織さんが駆けつけたときにはもう赤ちゃんはわたしの腕の中にいた。
 真っ青を通り越して真っ白な顔色だった伊織さんが、深い安堵のため息をついた姿を忘れられない。彼には本当に心配をかけてしまった。

 それから一年。
 明日、愛菜は一歳の誕生日を迎える。
 実は愛菜の誕生パーティー以外にも、もうひとつやることがあって、わたしたち家族は伊織さんの軽井沢の別荘に向かっていた。
 軽井沢は思い出の地だ。
 伊織さんと初めて出会った、『グラントレノ あきつ島』の旅。軽井沢で一緒に下車観光をして、美しい紅葉を見ながらいろんな話をした。
 すれ違いもあったけれど、あのとき伊織さんが幼少期に両親と過ごした軽井沢で、彼の家庭への憧れを知れてよかったと思う。
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