契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 別荘はレトロな洋館で、家の前には大人数でも余裕でパーティーのできそうなデッキがある。ここで今日の午後、愛菜の誕生日を祝ってバーベキューをするのだ。

「あーぅ、うぁぅ、きゃっ」
「車の中で寝てきたから、ご機嫌ね」
「愛菜、パパが抱っこしよう」
「パパが抱っこしてくれるって。よかったわね、まぁちゃん」
「きゃっ、うー」

 大きな荷物と、ときどき興奮したように笑う娘を両腕に抱えて、別荘に入っていく伊織さん。おしゃれな洋館に見とれていたわたしも、慌てて彼を追いかけた。

 昼すぎに隣町の実家から、両親と祖父母がやってきた。
 家族経営の旅館を何日も休むわけにはいかず、弟たちは留守番で仕事をしている。明日は弟たちも合流するので、浅野屋旅館は全館休館の予定だ。

「お父さん、お母さん、久しぶり!」

 愛菜を抱いて、玄関ホールで出迎える。

「結菜、まぁちゃんは大丈夫? 長旅で疲れてない?」
「よく寝たから元気だよ。お母さん、わたしの心配は?」

 孫ばかり見ている母に冗談めかしてすねると家族の笑い声がはじけて、一気ににぎやかになる。
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