契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
「そろそろお昼寝の時間みたい。寝かしつけてくるね」
「ありがとう」

 わたしが愛菜を受け取ると、母が伊織さんを呼び、彼はまた家族の輪の中に入っていく。
 リビングを出てドアを閉めてから、涙があふれて止まらなくなった。
 わたしは幸せだ。
 浮気した恋人にふられて、傷心旅行で乗った『グラントレノ あきつ島』。そして、偶然出会った人と、一夜のあやまち。
 予定外の妊娠から始まった関係だけど、あの豪華列車で彼に巡り会えてよかった。一度は身を引いたけれど、彼の素顔を知って、恋をして。
 孤独だった彼に家族という形の幸福をあげたいと思っていたけど、たくさんのものをもらっていたのは自分のほうだ。

「ね、まぁちゃん」

 愛菜をあやしながら、寝室に向かう。

「あなたにも会えて、ママは本当に幸せよ」

 これからもっとたくさんのものを彼に返したい。そうしたら、彼はもっともっと多くの気持ちを贈ってくれるだろう。
 与えて与えられて、幸せがどんどん増えていく。
 わたしたちはきっとこれから、そんなふうに家族の形を作っていくのだ。
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