契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 伊織さんは愛の言葉を惜しまない人だ。
 でも、そのささやきは軽くはない。むしろ、執着のような真剣さが感じられて重い。わたしにとっては、彼が浮気なんかしない人だと信じられるからうれしいくらいだけど。
 伊織さんと出会う前に付き合っていた恋人のことをちらりと思い出した。
 あのとき浮気相手の彼女が妊娠していたはずだけど、うまくやっているのだろうか。子どもに罪はない。幸せになってくれていたらいいなと思った。

「今、なにを考えていた?」

 わたしが少し気を散らしたのを伊織さんは敏感に察したみたい。

「ベッドにいるときは、俺以外のことを考えるな」
「そういうわけじゃないんだけど。ごめんなさい」
「俺はきみしか見ていないのに。結菜も、ほかになにも考えられないようにしてやろうか」

 伊織さんの眉間にしわが寄る。暗いフットライトに照らされた瞳の色が濃い。
 わたしは焦ってしまった。以前、元恋人からメッセージが来て、それを知った伊織さんが嫉妬をして、大変なことになったのだ。
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