契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 単なる近況うかがいのメッセージだったのだけど、伊織さんは『復縁をもくろんでいる』と怒っていた。わたしは当然元恋人と連絡を取るつもりはないし、伊織さんを傷つけるのはいやだったから、すぐに着信拒否をして連絡先を削除した。

「ち、違うの。あなたと一緒になれて幸せだなって思ってただけよ」

 焦るわたしを見下ろしていた伊織さんが、人の悪い笑みを浮かべる。

「じゃあ、もっと幸せにしてやる」
「伊織さんったら、もう」

 なにを言っても結果は同じらしい。
 たぶんわたしの気持ちもわかったうえで、ふざけているのだろう。大型犬が全力でじゃれてくるようなものだ。
 受け止めるのは大変だけど、それすらも愛しくて、心も体も、わたしの持つすべてを差し出したくなる。
 とくに今夜は、結婚式のあとの初夜みたいなものだし。
 出産後わたしの健康が回復すると、伊織さんは毎晩何度も求めてくるようになった。でも、毎回応えるのは難しくて、いつも我慢してもらっている。
 だから、今日くらいは伊織さんを満足させたい。
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