契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 伊織さんがかすれた声で低くささやいた。

「もう離さない。きみは俺のものだ」
「あなたもわたしのものよ?」
「当たり前だろ? 俺はもう、一生をきみに捧げている」

 彼の顔が近づいてきて、おでこに、頬に、鼻先にキスをする。そして、奪うように激しく唇に口づけた。

「いお……りさん、好き……んっ」

 わたしたちがあの豪華列車で出会ってから、まだ二年にもならない。
 その間に、妊娠して結婚して、子どもが生まれて。わたしを取り巻く環境は信じられないほど大きく変わった。
 代わり映えのしない毎日。不実な恋人の裏切りと、周囲の好奇に満ちたまなざし。そんな停滞した状況を振り切ろうと乗ったクルーズトレイン『グラントレノ あきつ島』。
 その一泊二日の旅で、すべてが変わった。
 これからも困難にぶつかるかもしれない。でも、ふたりならきっと乗り越えていける。
 だって、わたしたちは夫婦なのだ。夫婦であり、人生のパートナーであり、深い絆で結ばれた家族なのだから。
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