契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 俺は世間では成功者に分類されるだろう。東條家に生まれたのはたまたまだが、適性があったのか経営サイドの仕事を苦に思ったことはない。
 そんな自分に、こんなずるくて弱い部分があるとは思わなかった。結菜に対してだけ、俺は情けない人間になる。
 愛のない契約結婚なのに、どうしてここまでするのかという結菜に俺は答えた。

『契約結婚だとしても、俺はもう二度ときみにつらい思いをさせないと自分に誓ったんだ』

 それは本心だったが、急に心配になった。
 俺の想いは、結菜にとって重すぎるかもしれない。好きでもない男に、子どもの将来と引き替えに結婚を迫られ、新居まで用意される――冷静に考えると、ストーカーじみていないか?
 俺は『家族には、家が必要だろう?』とその場でごまかしたが、成功していたかはわからない。
 だが、強引に話を進める俺に結菜は、女神のように慈悲深く微笑んだ。

『アパートには戻りませんよ? わたし、この子のためにも、あなたとあたたかい家庭を作るって決めましたから』

 どれほど俺がほっとしたか、言葉にできないくらいだ。
 結菜は安らぎと生きがいを与えてくれた。俺はどんどん彼女に溺れていった。
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