契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 そんなある日、不測の事態が起こった。結菜が大量に出血したのだ。
 切迫流産だった。
 結菜を失うかもしれないという恐怖はすさまじいものだった。俺は彼女に真実を告げようと決意した。

『愛してる』

 俺の告白に、結菜は驚いたように目を見開いた。
 彼女のことを思えば、言わないほうがいいのかもしれない。彼女の負担になる可能性もある。
 けれど、言わずにはいられなかった。

『ひとりの男として、結菜を愛している。なにがあっても、きみをだれにも渡さない。あのいらだたしい元恋人にも、きみを奪っていこうとする死神にも、絶対に』

 幸運なことに、結菜は俺の気持ちを受け入れてくれた。そのうえ、自分も愛しているという。
 信じられなかった。契約で無理やり結菜を縛ろうとした俺が許され愛されるなんて、どんな奇跡なのか。

 そのとき、背後から最愛の女性の声がした。

「伊織さん、おはようございます。愛菜の面倒を見てくれてありがとう」

 結菜が起きてきたのだ。
 まだ、愛菜の朝食が終わったばかりだ。もっと寝ていてもいいのに、結局起きてしまうのはやはり娘が気になるのだろう。
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