契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
「いや、俺だって父親なんだから、娘の世話をするのは当たり前だろ?」
「ふふ、そういうところも好き」

 結菜がかわいらしく笑って、こちらを見つめる。朝から俺を魅了しようとしているのかと思ってしまう。

「あー、結菜。もう一度ベッドに連れていってもいい?」

 彼女は真っ赤になって、ぷるぷると首を振った。

「だ、だめよ。まぁちゃんが起きてるんだから」
「じゃあ、愛菜が昼寝をしたら」
「えぇ!?」
「冗談だよ」
「もう……」

 しょうがない人、という体でため息をつく結菜。少し安堵した様子の彼女をからかいたくて、意味深長な含みを持たせて笑って見せた。

「夜まで待つ」
「い、伊織さん!?」

 結菜は慌てて、一歩後ずさった。いつまで経ってもうぶな妻に愛しさがつのる。
 彼女に契約結婚を持ちかけた日には、このような穏やかな時間を持てるとは思っていなかった。
 結菜がすべてをくれた。
< 148 / 153 >

この作品をシェア

pagetop