契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 彼が含み笑いをするから知らないほうがいいのだろうと思って、やり方は聞いていない。
 なんにしても、このロイヤルスイートルームにまた泊まれてうれしい。

「結菜、なにを考えているの?」

 やきもち焼きの夫が、軽くにらんでくる。

「なんでもない。また『あきつ島』に乗れてよかったなって思ってただけよ」
「そうだな」
「愛菜は大丈夫かしら」

 大人のためのクルーズトレインである『あきつ島』には年齢制限がある。中学生以下は乗車ができないのだ。
 だから、今回愛菜はナニーに預けてきた。
 ナニーとはベビーシッターのこと。その女性はイギリスのナニー養成校を卒業した日系イギリス人で、乳幼児保育の専門家だ。時々お世話になっていて愛菜も懐いているし、人柄も信頼している。
 伊織さんは心配性のわたしに苦笑すると、甘い口調でささやきながら覆いかぶさってきた。

「ああ、大丈夫だ。今は、俺のことだけ考えて?」
< 151 / 153 >

この作品をシェア

pagetop