契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
「あー、あんなやつに腹を立てるだけ、時間の無駄! 結菜、今を楽しむのよ!」

 むくっと起き上がり、自分に活を入れた。頬を両手でパンパンと叩けば、なんとなく元気が出てくる。
 そして、荷物を片づけているうちに、列車はいつのまにか都会のビル群を抜け、広々とした田園風景の中を走っていた。
 真っ青な空の下、黄金色に輝く稲穂が秋風に揺れている。
 急におなかが空いてきて、時計を見たらもうすぐランチの時刻だった。少し早いけど、きちんとしたワンピースに着替えて、レストランに行こう。
 通路の窓から、高速で移り変わる景色を眺めながら、六号車に向かった。
 今日のランチとディナー、そして明日の朝食は、六号車の『ダイニングみず()』で提供される。
 昔の寝台列車や観光列車では、車内レストランは食堂車と呼ばれていたらしい。でも、『ダイニングみず穂』は食堂というより超一流レストランだ。
 高級な雰囲気の内装だけでなく、料理やドリンクも、世界的に有名なガイドブックで二つ星の評価を受けたという創作和食のシェフが監修しているのだという。
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