契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
「浅野さま、いらっしゃいませ」

 入り口で出迎えてくれたクルーが席に案内してくれた。もともとふたりで『あきつ島』を予約していたので、ひとりキャンセルしても、レストランの座席は大きめのテーブルだ。
 椅子を引いてくれたので腰かけて目を上げたら、隣の席にすごく目立つ男性が座っていた。

「あ、東條社長」

 カジュアルなジャケットから濃紺のダークスーツに着替えた東條伊織さんだ。
 背が高くて小顔でスタイルがいいから、そんな気のないわたしでも見とれてしまうほどかっこいい。
 最初に名刺を渡そうとしたとき東條さんにいやな顔をされたけど、あれはわたしが彼に言い寄ろうとしていると思ったのだろう。
 以前読んだニュースサイトの記事では、『鉄道王』の若き後継者は独身だったはずだ。これほどハイクラスな独身男性だったら、たしかにナンパどころかお嫁さん候補が殺到するだろうし、ハニートラップみたいなことをされたら警戒するわよね。
 今も思わず声をかけてしまったけれど、不快だったかもしれない。少し緊張して彼を見ていると、東條さんはこちらを向いて、かすかに笑った。
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