契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 長野県の軽井沢町は、今回の旅の帰路でも停車する日本有数の避暑地。わたしの実家は、そんなメジャーなリゾート地ではなく、軽井沢から車で十分ほどの田舎町の片隅にある。

「温泉か、いいな。そうだ、今回は俺もひとり旅なんだ。どうせなら、また一緒に飲まないか?」
「はい……?」

 わたしが戸惑っている間に、東條さんはレストランのスタッフに合図をして、ワインやカトラリーをこちらのテーブルに移してしまった。
 本人も向かいの席に移動してきて、軽くボトルを掲げる。

「国産のワインが今、注目されているだろう。これはその中でも一番の成長株で、先日海外のコンクールでも受賞したプレミアムワインなんだ」
「そうですよね、お盆に帰省したとき、ニュースで見ました。一度飲んでみたいと思っていたんだけど、さすがに高価で手が出なくって」

 思わず白ワインのボトルをじいっと見つめていると、東條さんが笑いながら注いでくれた。

「『あきつ島』は伝統工芸品だけでなく、沿線の農産物もメニューに取り入れているところがいいよな」
「その土地の食べ物は、旅行の楽しみですもんね」
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