契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 なんとか気を取り直して、グラスを手に取る。東條さんに丸め込まれたような気がしないでもないけど、おいしいものは正義だ。

「いただきます」

 黄金色に輝くワインの表面が、電車の震動に合わせて軽く揺れる。
 顔を近づけたら、ほんの少し酸味のある甘い香りがした。口に含むと、フルーティで豊かな味わいが広がる。

「わぁ、おいしい!」
「それはよかった」

 朝にはスパークリングワインも飲んだし、わたしはほろ酔いでちょっと気が大きくなっていた。
 普通の男友達を相手にするみたいに、気安く東條さんに話しかける。

「東條さんは意外と気さくな人なんですね~。見た目はクールなかんじなのに」

 彼はわたしをからかうように、くすりと笑った。

「きみも朝よりフランクだな。身分違いがどうとか言っていたのが嘘みたいだ」
「あはは、先ほどは失礼しました」

 あちらは大企業の社長で、こちらは平の会社員。最初に『わたしのような身分の者が恐れ多いです』なんて口走ってしまったけれど、実感としてはまさにそのとおり。
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