契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 彼はそんなわたしに呆れる様子もなく、楽しそうにうなずいた。その瞳は穏やかで、優しさすら感じられる。クールな貴公子のようだった第一印象が嘘みたいだ。
 わたし自身も会社で働いているときや、かつての恋人といたときとは違う、飾らない笑顔を返した。

「ディナーもご一緒しますか?」
「きみさえよければ」
「もちろんです!」

 意気投合というのかしら。性別も境遇も違うのに、なんとなく自然でいられる。
 言うまでもなく、彼のずば抜けた美しい顔立ちが視界に入ると一瞬ドキッとするのだけど、会話が始まれば気を遣わずにいられるのが不思議だ。
 別れたばかりの恋人以外にもこれまで付き合ってきた男性はいたけれど、こんなにリラックスして話せることはなかった。女同士だったら、わたしたちは親友になれていたかもしれない。
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