契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~

4.もう恋はしたくないから


 クルーズトレインは単なる移動手段ではない。
 もちろん交通機関としての役割は果たしているけれど、一流のレストランであり、最高級のホテルでもある。
『あきつ島』で過ごす一瞬一瞬が、心躍る体験だった。列車に乗ること自体がエンターテインメントになるのだと、わたしは今回初めて知った。
 和を感じさせるエレガントなインテリアや、見た目、味わいともに繊細な料理の数々。間近で奏でられるピアノやヴァイオリンの音色に、車窓を流れていく夜景。
 でも、こんなに心が浮き立つのは、きっと気の合った友人と一緒に過ごしているからだ。

「東條さんはお酒の中で、ワインが一番好きなんですか?」
「そういうわけではないが、よく飲みはするな。きみは?」
「わたしは日本酒かなぁ。でも、ビールも好きだし、ワインも好き」

 車内でのディナーを終えて、わたしと東條さんはラウンジで飲み直していた。
 日本海の海産物尽くしのディナーは最高においしくて、わたしはちょっと飲みすぎていた。けれど、楽しい一夜が終わってしまうのが惜しく、つい彼をラウンジに誘ってしまったのだ。
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