契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 旅程二日目のランチは、軽井沢のフレンチレストラン。『あきつ島』を下車して、専用バスで森の奥にあるレストランに行く。ランチのあとは、少し散策の時間が取られている。
 わたしたちは雲場池(くもばいけ)をぶらぶらすることにした。
 十月下旬は、ちょうど軽井沢の紅葉シーズンだ。雲場池は川をせき止めて造られた人造湖。周囲に遊歩道が整備されている美しい池で、紅葉の名所としても知られている。

「うわぁ、綺麗ですね」

 よく晴れた空の下、赤や黄色に色づいた木々が澄んだ湖面に映り込んで、とても華やかだった。

「実家は近くなんだろう? 今まで来たことはないのか」
「遊びに来たことはあるけど、ハイシーズンは道や駐車場が混むんですよね。だから、紅葉は見に来なかったなぁ」
「地元の人間は、意外と来ないものなんだな」

 隣を歩いていた伊織さんがさりげなくわたしの手を取って、指を絡めた。

「あの、えーっと」

 これって恋人つなぎじゃない? 手と手が密着して、少し引っ張っても離れない。
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