契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
けれど、わたしの心は激しく揺れていた。
「……動いてた」
医師から見せてもらったエコーの動画。
そこには、小さな、小さな赤ちゃんがいた。
ドップラーという超音波の聴診器をおなかにあてたら、赤ちゃんの心音が聞こえた。胎児は心拍数が多いらしく、ドッドッドッと力強い音が鼓膜に響く。
中絶の決断をしなければいけないと思っていたのに、わたしはなにも言えなかった。
「伊織さん」
久しぶりにその名を口に出してみる。
旅先だからこそ心を通わせることのできた、遠い世界の人。ずっと呼ぶのを自分に禁じていた名前。
妊娠したのは、あの夜しか心当たりがない。
『あきつ島』のロイヤルスイートルームで、列車の振動を感じながら抱き合った、夢のような一夜。
彼は避妊をしていたはずだけど、わたしは低用量ピルを飲んでいない。産婦人科のお医者さんに聞いたら、避妊具をつけていても、それだけでは妊娠してしまう確率が少なくないのだそうだ。
わたしはバッグの中から名刺入れを取り出した。一番奥に、あのとき彼からもらった名刺が入っている。
「……動いてた」
医師から見せてもらったエコーの動画。
そこには、小さな、小さな赤ちゃんがいた。
ドップラーという超音波の聴診器をおなかにあてたら、赤ちゃんの心音が聞こえた。胎児は心拍数が多いらしく、ドッドッドッと力強い音が鼓膜に響く。
中絶の決断をしなければいけないと思っていたのに、わたしはなにも言えなかった。
「伊織さん」
久しぶりにその名を口に出してみる。
旅先だからこそ心を通わせることのできた、遠い世界の人。ずっと呼ぶのを自分に禁じていた名前。
妊娠したのは、あの夜しか心当たりがない。
『あきつ島』のロイヤルスイートルームで、列車の振動を感じながら抱き合った、夢のような一夜。
彼は避妊をしていたはずだけど、わたしは低用量ピルを飲んでいない。産婦人科のお医者さんに聞いたら、避妊具をつけていても、それだけでは妊娠してしまう確率が少なくないのだそうだ。
わたしはバッグの中から名刺入れを取り出した。一番奥に、あのとき彼からもらった名刺が入っている。