契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 この見るからにあやしげな伝言が伊織さんのもとまで届くのかどうかはわからない。大きな会社だもの、毎日たくさんの営業や迷惑電話のような問い合わせも来るだろうし。
 それに、いっそ伝わらなくてもいい気がした。
 伊織さんの反応が怖くて、不安だった。

「でも、今、考えてもしょうがないわよね」

 わたしは吹っ切るように頭を振ってベンチから立ち上がり、公園を出た。食欲はないけれど、コンビニでサンドイッチだけ買って、アパートに戻る。
 その後、なんだか眠くてしょうがなくて、まだ日が高いうちに寝てしまった。

 目が覚めたときには、とっくに暗くなっていた。カーテンを閉めていないので、街灯の光が室内に差し込んでいる。
 ベッドに横たわったまま、ぼんやりと部屋を見まわす。
 六畳のワンルームに、キッチンとユニットバス。築浅なので小綺麗だけど、狭いことは狭い。
 三階建ての三階で、日当たりがいいのが決め手でここにした。だけど、低層のアパートにはエレベーターがない。今は問題ないけれど、これからおなかが大きくなったら、このまま住みつづけられるだろうか。
< 50 / 153 >

この作品をシェア

pagetop