契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 でも、引っ越しをするのにも、物件を探さなければならないし、準備とお金が必要だ。
 妊娠した体で、全部ひとりでできるのかしら。
 不安が込み上げて、また泣きそうになったところに、大きく着信音が響いた。

「わっ」

 びっくりしてスマートフォンを取り損ね、床に落としてしまう。
 転がったスマートフォンの着信表示は、『伊織さん』。
 どきどきしながら電話に出ると、懐かしい声が聞こえた。

『結菜? 結菜なのか?』
「はい……。メッセージが伝わったんですね」
『ああ。電話、ありがとう。ずっと連絡を取りたかったんだが、迷惑かと思っていた』
「迷惑?」
『あの日、俺とはもう、かかわりたくなさそうだったから』

 あの日というのは、『あきつ島』を降りて上野駅のホームで別れたときのことだろう。
 でも、なんで? わたし、かかわりたくないなんて言ったかしら。

『それよりも、なにか話があるんだろう? 今、どこにいる?』
「自宅ですけど」
『急ぎだと聞いたんだが、これから行ってもいいか?』
「えっ? えぇ!?」
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