契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
「じゃあ、ひとまず妊娠のお祝いと思ってくれないか」

 なんとか初戦を突破すれば、あとはなんだかんだと理由をつけて贈り物ができるようになるだろう。最初が肝心だ。
 結菜は悩みながら、左手の薬指にはめたダイヤモンドの指輪を見つめる。

「うーん……わかりました。じゃあ、今回はありがたくいただきますね。でも、本当にこれだけで十分ですからね」

 俺を見上げて、子どもにめっとするように軽く睨む結菜も、また愛らしい。
 一週間前、長野県の浅野屋旅館から電話があったという伝言を秘書から受け取ったとき、奇跡だと思った。
 結菜だ。すぐにわかった。
 浅野結菜。『グラントレノ あきつ島』で偶然出会った、俺の運命。
 たった二日間一緒に過ごしただけの女性だけれど、彼女が特別な人だということはじきに気づいた。
 一目惚れに近かった。
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