契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました～強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する～

「……んん。着いた？」
「ああ、きみのアパートだ」
「もう少し寝かせて……」

　彼女はむにゃむにゃとつぶやいて、また眠ってしまった。
　それから十分ほどして目覚めた結菜は、最初ぼんやりとまわりを見まわしていたものの、やがて自宅の前にいるということに気がつき動揺して叫んだ。

「あれ？　いつ着いたんですか？　起こしてくれればよかったのに！」
「くくっ、起こしても起きなかったんだ」

　思わず笑ってしまう。
　彼女がなにをしても愛しく感じる。俺の恋は、いつの間にかかなり重症化していたようだ。
　俺は道すがら考えていたプランを明日から実行することにした。

「結菜、一週間待ってくれないか？　準備を整えて、必ず迎えに行く」
「はい？」
「だから、その間は絶対に無理をしないでくれ」
「準備ってなんです？」
「きみはなにも心配しなくていい」
「はぁ」

　きょとんとして俺を見つめた彼女は、ぽつりとつぶやいた。

「伊織さんって不思議な人ですよね……」