契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
すれ違いの新婚生活
1.迎えに来たのは……
「営業二課の浅野さんって、一課の小平さんと付き合ってたんでしょ?」
「そうそう、三、四か月前だっけ、一課のアシスタントの子に略奪されたのよね」
仕事中に具合が悪くなって、給湯室で少し休んでいたら廊下から笑い声が響いてきた。
『営業二課の浅野』さんとは、わたしのことだ。
前に付き合っていた恋人――小平奏多さんの名前も出されている。
「浅野さん、若く見えてもアラサーだよね? その年で厳しい~!」
話しているのは、同じフロアで働く女性の同僚たちだ。決して仲が悪かったり、対立したりしているわけではない。でも、みんなおもしろおかしいスキャンダルには目がないようで、陰でいろいろ噂されているのは知っていた。
ただ、陰口を叩かれているという事実を知っているのと、実際にこの耳で聞くのはまた違う。体調の悪さとメンタルの不安定さのせいか、それなりにショックが大きい。
「それがさぁ、小平さんとその後輩の子、佐々木さんの結婚が決まったんだって」
「早っ!」