契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 伊織さんも誤解している。奏多さんには結婚を約束した相手もいるんだし、別れたわたしのことで嫉妬するわけがない。
 すると、奏多さんが怒りをむき出しにした。

「なにをっ……! 嫉妬なんてするかよ。こいつのほうが俺に惚れてたんだからな」

 わたしを指差して、馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
 伊織さんが振り向いて、気づかわしげにわたしを見つめた。

「結菜、そうなのか?」
「いいえ、彼は会社の同期で……友達みたいなかんじだったから、そのままなんとなく付き合ってしまって。今は後悔してます」

 胸もとに下げた指輪を握りしめて言うと、伊織さんはまた奏多さんのほうに向き直った。

「というわけだそうだが?」
「結菜、おまえ!?」
「まぁ、きみがだれでもいい。私は東條ホールディングスの東條伊織だ。私の婚約者になれなれしくするのはやめてもらおう」
「はぁ!? 婚約者?」

 奏多さんの間の抜けた叫び声に、まわりで見ている同僚や社員たちのどよめきが重なる。奏多さんはさらに大声を上げた。

「おい、おまえ、俺と別れたばかりなのに、もう男を作ってるのかよ」
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