契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました～強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する～

「じゃあ、風呂を入れてくるから、ここにいて」
「あ、ありがとうございます。お風呂をためるくらい、自分でできますよ？」
「俺にできることはさせてくれ。大事な時期なんだ。きみにはリラックスして過ごしてほしい」
「……はい」

　リビングを出ていく彼の背中は、広くて頼もしい。

『契約結婚だとしても、俺はもう二度ときみにつらい思いをさせないと自分に誓ったんだ』

　そう伊織さんは言った。
　彼はあの夜ちゃんと避妊していたのに、事故みたいな確率で新しい命を授かってしまった。伊織さんには社会的な立場もあるし、自分の子であると認めない可能性も、慰謝料で片づけようとする場合もありえた。
　わたしはもう半ばシングルマザーとして生きていくつもりだったので、そんな彼の気持ちは本当にありがたい。
　だから、わたしも自分に誓おうと思った。
　たとえ契約の夫婦関係でも、わたしは伊織さんに心を尽くしていきたい。芽生えてしまった想いは胸に秘め、元気な赤ちゃんを彼の手に抱かせてあげられるようにがんばろう。
　冷めてしまったミルクをひと口飲む。