ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない


「それが…クリスマスは、
用事があるらしくて…」

用事ってそれ、多分、家族と過ごすって
ことじゃないの?

「だから、私、一人で映画を観るつもりなんです!
えっと、ケーキとチキンと
100均でトナカイのカチューシャでも買って、
それつけて、家でゆっくりしようかなーって…

友達は彼氏や旦那さんがいるし、
実家はクリスマスをしないので、帰っても楽しいことは
ないですし…

へへへ…みじめですよねー…」

ポツリ、と北川さんの目から涙が落ちた。

「あ、あれ…私、何泣いてんの。
クリスマスに一人だから泣く?
メンタル弱すぎですよね。
一人なんて人、他にもたくさんいますし…」

俺は思わず、北川さんを抱きしめた。
北川さんが持っていた、球体のツリー飾りが、
床にコトンと音を立てて落ちた。

一人だから悲しいんじゃなくて、
あいつと過ごせないから悲しいんだろ。

そして、彼女の腕は俺の背中に
ゆっくりと回された。


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