ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない


せっかくなら北川さんが
好きなものをあげたいから、
俺はこそこそと聞き込みを始めた。

「北川さんの趣味?」

職場で北川さんがいつも話してる
隣の島の沖野さん。
彼女なら知ってそう。


「趣味っていうのかわからないけど、
よく映画の話するわね。
なんちゃらって俳優がどうとか言ってるけど、
全部海外のやつだから、
あたしわかんなくてさ」

確かに、北川さん、海外の恋愛映画、
詳しいもんな。

「あと、趣味じゃないけど、あの子、
冷凍みかん大好きよね」
「そうなんですか?」
「加瀬くん、知らない?
給湯室の冷凍庫の中に
みかんが詰まったジップロック入ってるでしょ。
あれ、北川さんのだからね」

冷凍庫なんて開けないから、
知らない、そんなこと。

「私物は入れたらだめって決まってるのに、
食後の冷凍みかんを食べたいからって、
冷凍庫の家賃まで払ってんのよ」


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