ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない
「か、加瀬さん!」
北川さんだった。
寒さでちょっと鼻が赤くなっていて
かわいい。
「お疲れ様です」
ここにいるってことは、
北川さんも買い物かな?
と思ったけど、
荷物らしき物はもっていなかった。
「今から帰る?」
「あ、はい。
用事が済んだので」
「暗くて危ないから、一緒に帰ろ」
「ありがとうございます」
北川さんは俺の横に並んだ。
「寒いですねー」
「明日はもっと寒いらしいよ」
「えー、やだなぁ」
北川さんは両手に息を吐いた。
手、冷たいんだ。
「手袋は?」
「去年片方なくしちゃって…
新しいの買わなきゃな…
加瀬さんは手袋しない派ですか?」
「俺、コートのポケットに入れるから」
「いいなぁ…
私のこのコート、ポケットないんですよ」
北川さんはコートを
払うようにパンパンと叩いた。
「じゃあ、おいで」
俺は北川さんの左手を握ると、
そのまま自分のコートのポケットに、
連れてきた。
「……あ」
「あったかい?」