ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない
店員二人は顔を見合わせ、
困ったようにこそこそと話し出した。
「お気持ちは分かるのですが…
ちょっと…」
結局俺は、手ぶらで車に戻った。
あそこでケーキを買って帰るか?
いや、あの店のケーキなら
俺の方が絶対おいしいのを作れる。
コンコンコン。
その時、
桃色のニットの帽子とマフラーを巻いた
おばあさんが俺の車の窓ガラスを叩いた。
この人、さっき、ケーキ屋でシュークリームを
たくさん買っていた人だ。
窓を開けると、おばあさんは、
どうも、と笑顔で会釈した。
「はぁ~やっぱりすごくハンサムね~」
なんだ、俺のファンか。
さすが俺、こんなおばあちゃんにまでモテるなんて。
「追いかけてしまって、ごめんなさいね。
あなた、生クリームを探してるんですってね?」
「はい」
「さっきうちの娘に聞いてみたら、
余ってるって言ってね。
お譲りしようかと思って」
「…え」