ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない
切り口もちゃんと美しいケーキだった。
北川さんを喜ばせたい一心で作ったケーキ。
ちょっといとおしく思えてくる。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
俺も自分の皿に盛り、
二人で手を合わせる。
「いただきます」
俺はドキドキして、
北川さんがケーキを口に入れるのを見守った。
大丈夫。
俺が作ったんだからおいしくないわけないし。
「……んー」
北川さんは驚いた顔で、口を手で覆った。
「どう?」
「すごくすごくおいしいです…
こんなにおいしいケーキ、
初めてです!」
北川さんは俺の方を見て、
にこっと笑った。
「あの…何ていうか…
加瀬さんが心を込めて作ってくれたんだなっていうのが
伝わってくる味です」
「………よかった」
そして俺はなぜか、
涙が出そうになった。
あぁ、よかった。
今日一日大変だったけど、
頑張ってよかった。
北川さんが喜んでくれて、
笑顔になってくれてよかった。
それだけでもう十分。
「加瀬さん、お風呂に入ってきてください」
ケーキを食べ終わると、
北川さんがお皿をまとめながら言った。