ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない
北川さんは拒む様子もなく、
俺の腕の中にすっぽり収まって、
板チョコを握ったまま、
俺の胸にぴったりくっついた。
どうしよう…
俺、デートとかすっとばして、
北川さんとくっついてしまった…
俺の心臓の音がドキドキビートを
刻んでるの、
絶対北川さんに聞こえてる。
そして、もう離したくない。
「今は俺がいるから、安心して」
小さな北川さんの体が
壊れない程度に、
ぎゅっと力をこめた。
「……ん」
涙止まったようだった。
ぐぅ~…
代わりに北川さんのお腹が鳴った。
「俺もご飯まだなんだ」
「何食べるんですか?」
「んー…何にしようかな…」
ほんとは作る気を失ってたけど、
北川さんのお陰で、
ちゃんとキッチンに立てそうだ。
「加瀬さん…」
「うん?」
「一緒にお酒、飲みませんか?」
俺は今日色々あって、
北川さんも色々あるらしくて、
じゃあ、二人で酔っぱらって、
楽しくしましょうよ
って意味だなと思った。