ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない

それから、数週間後。

「おはよう、北川さん。
教えてくれた映画、動画配信サイトで観たよ。
すごくよかった」
「おはようございます、加瀬さん!

でしょう?
ただの会話劇なのに、
色んな出来事があって、
二人は心を通わせていく感じが
すごくよくって…
二人の出会いはものすごい偶然だと思うんです。
運命というか」

俺はエレベーターのボタンを押した。

「そうだね。俺は、カフェのシーンが好きだった。
二人はお互い言いたいことを
はっきり言えない。
でも言い出したいというところをうまく
みせていて、
モノローグがないのに、
二人の気持ちがよく分かる」
「そうなんですよ!それで──…」


ハイスペな俺は、数週間で
北川さんが楽しそうに話す
会話ができるようになった。

さすが俺、適応能力すごいな。


前みたいに、
北川さんにとってつまらない会話は
もうしない。


北川さんにとって、
頼れる&話せる男になるんだ。


「そうだ!今夜一緒に、
あの映画の2番、観ませんか?
ベッドの中で」


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