ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない
…………
ショックで、俺は放心状態になった。
そして、コーヒーにミルクを入れすぎて、
もうコーヒーではなくて、
コーヒーの香りがするミルクになった。
「……はぁ」
まるで今まで頑張って登ってきた山の崖から、
突き落とされたような気分だ。
全部は何の意味もなかった。
北川さんと過ごした時間が、
夢だったように思えた。
きっと北川さんにとっては、
ただの男友達と楽しくしている感覚だったんだ。
俺だけが、いい感じかもって浮かれてた。
期待してたんだ。
俺といる時も、俺と笑いあってる時も、
北川さんの心はあの老けた男のものだったのに。
しばらくして、遠くから聞こえる
さっきのナンパ店員の声で、
俺は、はっと我に返った。
「あ、えっと、あの、
ぷりーず…えーと、てーぶる」
「???」
店の入り口の方を見ると、
彼女は外国人客と意思疏通がとれず
困っていた。