ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない


考えただけでドキドキする。

北川さんは毎朝、何時に家を出るだろうか。

朝、同じタイミングでドアを開けて、
あ、どうも。おはよう。
あ、一緒にどう?
目的地は同じなんだし。
みたいな流れで一緒に出社とか。

いや、さすがにがっつきすぎ。


そのうち日も傾いてきたから、
晩飯でも作ろうかと立ち上がると、
インターホンが鳴った。

俺はちょっとドキドキしてドアを開ける。


「加瀬さん、お忙しい時間にすみません。
あの…えっと…実は…」
「どした?」
「ちょっと困ったことになりまして…」
「うん?」
「IKEAで買った棚が、全然組み立てられなくて…
よくわからないし重いし…
あの…手伝ってもらえませんか?」
「……」


キタ─────────っ!!!!

っしゃー!チャンス!チャーッンス!
男を見せるチャンス来た!

と内心大興奮だけど、
絶対表情には出さない。
男はクールが一番かっこいいと思ってるから。

「まだ片付いてなくて、
汚いのですが…どうぞ…」

俺は段ボール箱だらけの、北川さん宅に
足を踏み入れた。




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