ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない
「あの時のイケメンのお兄さんが、
まさかあそこの社員さんだったなんて」
夜、俺たちは駅前の小さな居酒屋で
待ち合わせた。
「それで、話っていうのは何ですか?
この前の蛇口のお礼なら大丈夫ですよ」
「北川さんのこと、どうするつもりなんですか?」
俺はこの人と長くいるつもりはなかった。
さっさと話を終わらせたい。
「……え、もしかして、お兄さん、
結花と仲良いんですか?」
結花は北川さんの下の名前だ。
こいつ、下の名前呼び捨てで呼んでるのか!
腹立つな。
この俺が名字さん付けなのに。
「まあ、はい」
彼はちょっと気まずそうな顔をして、頭をかいた。
「結婚して、子供もいますよね?
なのに、それを隠して、北川さんをたぶらかしてる」
「違うよ、あの子が一方的に」
はぁ?と叫びそうになったけど、
なんとか抑え込んだ。
「じゃあ、泊りがけの旅行なんて行くなよ」
「あ、あれは…」
「言い訳とかいいから、北川さんを傷つけずに消えるか、
家族を捨てて北川さんを選ぶか
どっちかにしろ」