もう一度、重なる手
父が亡くなったあと、母が付き合った中で唯一まともだったのはひとりだけ。母の高校の同級生でだったという二宮さんだ。
二宮さんは母の地元でもある横浜市内で内科のクリニックを開業しているお医者さんで、話し口調の柔らかい、笑顔の素敵な人だった。
二宮さんも五年以上も前に病気で奥さんを亡くしていて、クリニックの仕事をしながら一人息子を育てているシングルファーザーだった。
高校時代の同窓会で再会したという母と二宮さんは、ひとりで子どもを育てているというお互いの境遇を知って親しくなり、その関係は交際に発展して、ふたりは再婚をした。
母と二宮さんが再婚したのは、わたしが七歳のとき。その当時、二宮さんの息子の侑弘さんの年は十三歳。
母の再婚と同時に、私には年の離れた兄ができた。
思春期真っただ中に父親が再婚して年の離れた妹までできた兄は、内心フクザツだったと思う。
だけど、兄になった人は二宮さんと同様とても優しい人で。勉強を教えてくれたり、休みの日には遊びに連れて行ってくれたり、私のことを本当の妹のようにかわいがってくれた。
私も兄のことを「アツくん」と呼んで、彼になついた。