もう一度、重なる手
抱きかかえられているあいだは、恥ずかしさとアツくんに触れられているドキドキで他のことに気を回している余裕がなかったけれど。もしも見られていたら……。
「フミ、大丈夫?」
両手でスマホを握って震えていると、椅子に座ったまま距離を詰めてきたアツくんが、私の手を両側からそっと包んできた。
アツくんの手が、血の気がひいて指先まで冷たくなった私の手をじんわりと温めてくれる。その温もりがやけに胸に沁みて、泣きそうになった。
「小田くんと何かあった?」
うつむいて唇を噛む私に、アツくんが優しい声音で訊ねてくる。
最近の私のストレスの原因は、翔吾くんの束縛のせい。だけどそれは、私と翔吾くんのふたりの間の問題であって、アツくんには関係ないことだ。
「別に、何も。順調だよ」
「ほんとうに? なにか困ってることがあるならちゃんと話して」
「そんなのないから、大丈夫だよ」
顔をあげて少し無理やり笑おうとする私の目をアツくんがじっと見てくる。そのまなざしに動揺して、微妙に視線を逸らすと、アツくんが私の両手をきつく握り込んできた。
「俺に隠し事できると思ってる? フミがウソついてるからどうかなんて、俺には瞬きひとつでわかるよ」
「まさか――」
「もしかして、小田くんに、俺とは会うなって言われてる?」
ドキッとした。思わず身震いするほどに。
どうしてアツくんは、そんなことまで見抜いてしまうのだろう。翔吾くんのラインの中身を見せたわけじゃないのに。