もう一度、重なる手
顔をこわばらせて固まる私に、アツくんが「やっぱり」とため息を吐く。
「この前小田くんを紹介してもらったとき、なんとなくだけど彼の俺を見る目に敵意を感じたんだよね」
アツくんが、眉尻を下げて苦笑いする。
「あの日の帰り際にフミが帰り際にトイレに行って、少しだけ俺と小田くんのふたりだけになったの覚えてる? そのとき、彼にはっきりと牽制されたよ。『史花とは結婚も考えてるので、誑かすつもりで近付いたならやめてください』って」
「そう、なの……?」
「うん。フミは俺にとって大切な家族だし、これからのフミの幸せを願ってるって言ったら、小田くんは表向きは愛想良く笑ってたよ。でも内心では、フミと血の繋がりもないくせに兄貴ヅラしてる俺のことも、フミが十四年ぶりに再会した俺と連絡取り合ってることもあんまりよく思ってないんじゃないかなって。そんな気がした」
あの日、私がトイレに行っている間にそんな会話が繰り広げられていたとは知らなかった。
翔吾くんが、笑顔の下にアツくんに気付かれるくらいの敵意を隠していたことも。
「翔吾くんは、私がアツくんに対して恋愛感情を持ってるって誤解してるんだと思う……」
私の言葉に、アツくんがピクリと眉を引き攣らせた。