もう一度、重なる手

「俺は、小田くんが怒るからそばにいるのも、彼を好きなフリをするのもちょっと違うかなって思う。誰がどう思うかじゃなくて、大事なのはフミが小田くんと一緒にいたいって思うどうかでしょ。俺と会うか会わないかだって、小田くんに指図されることじゃなくて、フミが会いたいかどうかで決めてよ。フミは昔から人のことばかり考えて行動するけど、フミがフミ自身で決めていいんだよ」

 そっと視線をあげると、アツくんが少し目を細める。

「ちなみに俺は、小田くんに何と言われようが、これからもフミに会いたいよ。もちろん、フミが嫌じゃなければだけど。フミはどう?」

 私を見つめる優しいまなざしに。小首をかしげる少しあざとい仕草に。胸がぎゅっと詰まる。

「そんな聞き方、ずるい……」

 翔吾くんへの気持ちがわからなくて。どうしようもなくなっている私にも、ひとつだけわかっていることはある。

 翔吾くんにはアツくんには二度と会うなって言われたけれど、それだけは嫌だ。

 私が自分の意志で決めていいのなら、アツくんには。アツくんにだけは会いたい……。これからも。

 だって、ずっと会いたかったんだから。

< 103 / 212 >

この作品をシェア

pagetop