もう一度、重なる手

「これ何?」

「何って、お弁当だよ」

「それはわかるけど……」

 どう見ても手作りのお弁当が入っていそうな巾着袋。それを前にまばたきしていると、アツくんが横から巾着袋の結び目をシュッと解いた。

「忙しいと外に休憩に出られないから、基本的には弁当作ってるんだ」

「アツくんが自分で?」

「そうだよ」

 だから、昼休みにカフェに行っても毎回会えるわけじゃなかったのか。

 そういえばアツくんは、高校生のときから簡単な料理なら作れていた。

「コンビニ行ったけど、お弁当は既に品薄になったんだ。俺は買ってきたおにぎり食べるから、フミはこれ食べて。たいしたおかずじゃないけど、コンビニおにぎりよりはいいでしょ」

 アツくんが開けてくれたお弁当箱の中身は、卵焼き、唐揚げ、牛肉とピーマンの焼き肉炒めなど。お肉中心のガッツリ目なおかずが詰められていて。

 たいしたおかずじゃないどころか、めちゃくちゃ美味しそうだ。
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