もう一度、重なる手
「何か飲み物でもいれる?」
食卓の脚にカバンを置く翔吾くんの背中に、おずおずと訊ねると、振り向いた彼が眉間を寄せて目をすがめた。
「飲み物もいいけど、史花はもっと俺に言い訳したほうがいいんじゃない?」
「言い訳?」
「そう。あるでしょ、たくさん」
食卓の椅子を引いてドカッと腰を下ろすと、翔吾くんが頬杖をついて私を見上げてきた。
「先に謝りたいことがあるなら、聞くよ」
私が謝るのが当然。翔吾くんは、そう思っているらしい。
昼休みに、アツくんといるところを見られたのはよくなかった。その理由をすぐに翔吾くんに話さなかったのも、翔吾くんからかけてきた電話を無視したのもダメだった。
だけど、初めから私の不貞を疑って、100%私だけが悪いと思わせてくる翔吾くんのことをなんとなく気持ちが受け入れられない。
「早くなんとか言えば?」
言い訳も謝罪もせずに黙っていると、翔吾くんが不機嫌そうに舌打ちをする。
「昼休みに……、すぐに事情を説明しなかったのは、よくなかったと思う……」
途切れ途切れに、言葉を探しながら話す。
「それだけ?」
はっきりと謝らない私に、翔吾くんはどこか不満そうだった。