もう一度、重なる手
頬の痛みとショックでうまく寝付けないまま一夜が明けて。鏡に映る自分の顔を見たとき、ものすごく気分が落ち込んだ。殴られた痕が、思った以上に痛々しくて。見るに耐えなかったのだ。
翔吾くんは謝りさえすれば許されると思っているのかもしれないけれど、どれだけ謝罪の言葉を並べられても、「好きだ」と言われても、暴力で私の気持ちを繋ぎ止めようとしてきた彼を受け入れられそうになかった。
そして、日にちが過ぎて頭が冷静になればなるほど、彼のことを受け止められない気持ちは強くなる。
翔吾くんに会ったとしても、私が彼に伝えたいのは「別れたい」という意志だけ。
だけど、別れを告げようとしたら、翔吾くんはまた私に手をあげるかもしれない。そう考えたら、憂鬱だった。
二日ぶりに出社した日の夜。オフィスを出ようとすると、翔吾くんからラインが届いた。
〈この前は悪かった。どうしても史花と話がしたい。今日は早く仕事が終わりそうだから、会いに行っていい?〉
この二日間、謝罪の言葉だけを送り続けてきた翔吾くんから、疑問系のメッセージが送られてきてことにドキリとする。