もう一度、重なる手
胸の前で抱きしめた膝にコツンと額をぶつけると、後頭部にアツくんの手が触れる。
「フミ、ドライヤーしてないじゃん。場所わかんなかったよね。ちょっと待ってて」
アツくんが、私の濡れた髪をぐしゃりと撫でて立ち上がるとどこかに歩いて行く。
しばらく待っていると、リビングに戻ってきたアツくんが、ソファーに一番近いコンセントにドライヤーのプラグを差した。
そのままドライヤーを手渡されるのかと思ったら、私の背後でブォーッとドライヤーが音を立て始める。
その音にびっくりしていると、後ろに立ったアツくんが、あたりまえみたいに私の髪にドライヤーを当て始めたから、さらにびっくりした。
「アツくん、それくらい自分でできるよ……!」
「いいんだよ。俺も資料読むのに疲れたから、ちょっと気分転換」
腰を眺めたアツくんが、私の耳元でそう言って、髪の毛の中に手を差し入れる。
髪や頭皮にアツくんの指先が触れるたびに胸がドキッとしたけれど、人にドライヤーをかけてもらうのはとても気持ちがいい。
最初こそ抵抗したけれど、結局私は、アツくんのされるがままになっていた。