もう一度、重なる手

「はい、終わり」

 頭に触れられる心地よさにウトウトしかけたとき、アツくんの声が聴こえてドライヤーの音が止まる。

「あ、うん。ありがとう……」

「眠くなっちゃった?」

 ぽやんとした声でお礼を言うと、アツくんにクスッと笑われた。

「先に寝ていいよ。フミは上のベッド使って」

 アツくんがそう言いながら、リビングの上にあるロフトを指差す。

 梯子状の階段から登れるロフトにはベッドが置いてあって、アツくんはそこを寝室として使っているらしい。

「アツくんはどこで寝るの?」

「もう少し資料を読んだら、このままソファーで寝るよ」

「そんなの悪いよ。私がソファーで寝る」

「いや、風邪ひくといけないからフミはちゃんとベッドで寝て」

 アツくんが座る分のスペースだけ空けてソファーに寝転がろうとしたら、呆れ顔のアツくんに止められた。

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